ヒメアジサイは、朝ドラ『らんまん』のモデルである植物学者・牧野富太郎博士が長野県の民家に咲いているところを見つけ、学名・和名をつけたアジサイです。
一般的に小ぶりのアジサイのことを「ひめあじさい」と表現することがありますが、それらと区別するために「マキノヒメアジサイ」とも呼ばれます。
青空のような美しい色と、まるで小さな手毬(てまり)が集まり一つの大きな毬になったような形が特徴です。
ヒメアジサイは野生では確認されておらず、牧野博士ゆかりの植物として全国の施設で大切に植栽されています。
貴重な「ヒメアジサイ」を鑑賞・撮影できる場所や特徴などを紹介します。
ヒメアジサイを見られる場所
鑑賞・撮影スポットとして有名なのは下記の場所です。
- 高知県立牧野植物園
- 練馬区立牧野記念庭園
- 神戸市立森林植物園あじさい情報センター
- 神戸市・六甲高山植物園
- 鎌倉市・明月院
1、高知県立牧野植物園
まずは牧野富太郎博士ゆかりの施設・高知県立牧野植物園です。
名称 | 高知県立牧野植物園 |
住所 | 高知県高知市五台山4220−6 |
駐車場 | ※園内駐車場は改修中のため台数制限あり 高知新港の無料臨時駐車場とシャトルバス利用が便利です |
HP | 高知県立牧野植物園 |
広さ8ヘクタールもある牧野植物園は、どこに行けばよいのか迷ってしまうかもしれませんね。
植物園の入口にある「牧野植物園 見頃の植物マップ」をもらって、今咲いている花の見頃と場所をチェックしましょう。
スマホで「まきのQRコード」を利用すると、ヒメノアジサイは展示館中庭の牧野富太郎ゆかりの植物エリアなど数か所にあることが分かりました。
2、練馬区立牧野記念庭園
東京都練馬区にある牧野記念庭園は牧野富太郎博士が、1926年(大正15年)から1957年(昭和32年)まで約30年間住んだ居宅と庭の跡です。
博士の逝去の翌年の1958年(昭和33年)に練馬区立の庭園となりました。
博士は生前、自宅にヒメアジサイを植えていましたが、自宅跡地を整備してできた牧野記念庭園で見ることはできなくなっていました。
そこで博士の生誕160年を記念して、2022年5月14日高知県立牧野植物園で系統保存されていたヒメアジサイが「牧野記念庭園」に里帰りして植樹されました。
施設名 | 練馬区立牧野記念庭園 |
住所 | 東京都練馬区東大泉6丁目34 |
HP | 練馬区牧野記念庭園のご案内 牧野記念庭園情報サイト |
3、六甲高山植物園・アジサイ園
六甲高山植物園は兵庫県神戸市の六甲山上にある植物園で、牧野富太郎博士の指導を受けて1933年6月に開園した施設です。
海抜865メートルという北海道南部に相当する気候を利用して、高山植物を中心に世界の寒冷地植物約1,500種が栽培されています。
アジサイ園には六甲ブルーと呼ばれるヒメアジサイが植栽されています。
施設名 | 六甲高山植物園 |
住所 | 〒657-0101 兵庫県神戸市灘区六甲山町北六甲4512−150 |
HP | 六甲高山植物園 |
※冬季(通常11月終わり頃から2月頃まで)は施設は休園しています。
4、神戸市立森林植物園・あじさい情報センター
神戸市立森林植物園は、1940年に開館した兵庫県神戸市北区にある植物園です。
総面積142.6haという広大な樹木植物園で、周辺は瀬戸内海国立公園に指定されています。
標高は最も高いところで海抜440メートルです。
こちらのあじさい情報センターでも六甲ブルーのヒメアジサイを見ることができます。
施設名 | 神戸市立森林植物園あじさい情報センター |
住所 | 〒651-1102 兵庫県神戸市北区山田町上谷上 字長尾1-2 |
HP | 神戸市立森林植物園・あじさい情報センター |
アジサイは神戸市民の花として1970年に制定されたそうです。
5、鎌倉市・明月院
神奈川県鎌倉市にある明月院は「あじさい寺」として有名なお寺です。
境内にはおよそ2500株のあじさいが植えられており、ほとんどは「ヒメアジサイ」の品種です。
淡い水色から濃い青色へと青みを増していく独特の色彩から「明月院ブルー」と呼ばれています。
名称 | 福源山明月院(ふくげんざんめいげついん) |
住所 | 〒247-0062 神奈川県鎌倉市山ノ内189 |
HP | 鎌倉市観光協会・公式観光ガイド「明月院(あじさい寺) |
ヒメアジサイの特徴
ヒメアジサイは名前の由来もふくめ、その特徴を知っておくと他のアジサイとの違いが分かります。
発見時の状況
1928年(昭和3年)牧野富太郎博士が、信州から東北にかけて植物の採集旅行をした際、長野県戸隠山に近い民家で植栽されていたところを発見し命名しました。
ヒメアジサイは葉が厚く光沢のあるホンアジサイとは明らかに異なります。
牧野博士は花の形が女性的で優美なことからヒメアジサイと名付け、昭和4(1929)年に『植物研究雑誌』に発表しました。
学名 | Hydrangea serrata (Thunb. ex Murr.) Ser. forma cuspidata (Thunb.) Nakai |
和名 | ヒメアジサイ(姫紫陽花) |
分類 | ミズキ目 アジサイ科(ユキノシタ科から分離) アジサイ属 |
分布地 | 本州 |
開花時期 | 6月(下旬) 〜 7月(下旬) |
花言葉 | 七変化 移り気 |
特徴
ヒメアジサイには次のような特徴があります。
- 青空のような美しい色をしている。
- 葉面に光沢がなく花球は小さい。
- 茎が複数に分かれている。
- 複数の小さな手毬が集合して大きな手毬状になっている。
- まとまると花の形がゴツゴツしたように見える。
品種
アジサイにはいろいろな品種がありますが、そのなかでも富太郎博士が発見したヒメアジサイは、エゾアジサイのテマリ品種と考えられています。
エゾアジサイとは?
北海道から本州の日本海側と九州に分布し、積雪にも耐えられるよう枝に柔軟性があります。 全体的に大型です。
テマリ品種とは?
清楚な小花をぎっしりと手毬状に咲かせる品種です。集まることでボリュームのある見た目になります。
花の見頃
地域によっても多少変わりますが、6月初旬に咲き始め中旬に見頃を迎えます。
アジサイの歴史と種類
アジサイの歴史と種類をおさらいしましょう。
アジサイは日本原産の植物で世界で広く親しまれています。
現在、世界中で約2,000種類以上の種類があるといわれています。
丈夫で育てやすく乾燥しないように気をつければ、初心者でも鉢植えや庭植えで栽培することができます。
アジサイは江戸時代後期、シーボルトが欧州に持ち帰ったものが人気となり品種改良されました。
それらがセイヨウアジサイとして大正時代に逆輸入され日本に広がっています。
咲き方によって大きく3つのタイプに分けられます。
- ホンアジサイ:手毬(てまり)咲き状の装飾花(ガク)からなるもの
- ガクアジサイ:中心部の小さな集合体が花で、周辺にある装飾花(ガク)が額状に囲むもの
- セイヨウアジサイ:ホンアジサイが西洋に渡り大輪の花を付けるように品種改良されたもの
また地域によって種類があります。
- ヤマアジサイ:主に太平洋側の福島県から四国・九州に分布。林や沢沿いに生育することから別名サワアジサイともいう。
- エゾアジサイ:北海道や東北など雪の深い地域と九州に分布。ヤマアジサイの変種と考えられる。全体的にヤマアジサイより大型。装飾花は澄んだ青色が多い。
※ガクアジサイとヤマアジサイとは似ていますが、ガクアジサイは葉に光沢があり、ヤマアジサイは葉に光沢がありません。
花に見えるのはガク
アジサイは不思議な植物です。
花びらのように見える部分は花ではなく、装飾花というガク(萼)の部分です。
通常、ガクは花びらを外側から保護する役目がもちますが、あじさいのガクは花弁となって昆虫を誘引する役目をもったとされています。
本当の花である真花は小さく、ガクの根元や中心部に咲いています。
まとめ
青空のような美しい色と、まるで小さな手毬(てまり)が集まり、ひとつの大きな手毬になったような形が特徴のヒメアジサイ。
牧野富太郎博士が発見し命名した優雅で美しい色をしたヒメアジサイを見に、ぜひそれぞれの箇所に足を運んでみてください。
高知県内のあじさいの名所
高知県内にも6月~7月の時期に、見事なあじさいが見られる名所があります。
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