ムジナモ、なんだか面白い名前の植物ですね。
和名はタヌキの別名である狢(ムジナ)の尻尾に似ていることに由来しています。
朝ドラ『らんまん』のモデルとなった牧野富太郎博士ゆかりの植物です。
1890年(明治23年)牧野富太郎博士が東京小岩の用水池で発見し、その後、花が咲くことを世界で初めて確認し、牧野博士の名前を一躍有名にしました。
ムジナモはどんな形の植物で、花はいつ咲くのでしょうか?
実際に見ることのできる施設もあわせて紹介します。
ムジナモ(貉藻)
ムジナモは根っこのない浮遊性の水草で、世界でも珍しい水生食虫植物です。
モウセンゴケ科の多年草で、現在、世界的に絶滅が危惧されている貴重な食虫植物です。
ムジナモについて、とても分かりやすくまとめられた動画がありましたので紹介します。
学名と和名
学名 | Aldrovanda vesiculosa |
和名 | ムジナモ(貉藻) |
分類 | ナデシコ目 モウセンゴケ科 ムジナモ属 |
指定植物 | CR:絶滅危惧IA類 |
分布地 | 日本、朝鮮、中国東北部、インド、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア |
開花時期 | 条件のそろった7月~8月の1時間ほど。開花しないことが多い。 |
花言葉 | 待ち続ける恋 |
ムジナモが属しているモウセンゴケ科はすべて食虫植物で、3つの属に分かれます。
- ムジナモ属・・ムジナモのみ
- ハエトリグサ属・・ハエトリグサのみ
- モウセンゴケ属・・そのほか200種類弱
1属1種のムジナモは学術的にとても珍しい植物です。
特徴
根っこの無い多年生の水草のムジナモは、茎に関節があり、葉は一定の箇所から輪を描くように並んで(輪生)生えています。
葉は左右に二枚貝のように開閉し、葉の内側に感覚毛があります。ミジンコなど水中の小動物が感覚毛に触れると葉が閉じられ、閉じ込められた生物は消化吸収されるのです。
ムジナモが葉を閉じるスピードは、植物の中でも世界一といわれています。
こちらはムジナモがオタマジャクシを捕食した時の動画です。
ムジナモは17世紀インドのカルカッタ地方で初めて発見され、ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリア・インドのベンガル地方、中国大陸北部、黒竜江沿岸の一部で発見され報告されました。
現在、環境破壊等の理由で、ほとんどの地方で絶滅の危機に瀕しています。
日本では大正時代に、国の天然記念物に指定されていましたが、開発や水質汚染、魚による捕食等で野生の生息地がなくなってしまいました。
幸い、栽培に成功した個体が残っていたため絶滅自体はまぬがれ、かつての生息地や植物園や水族館をはじめとした施設での保全活動がおこなわれています。
参考文献:ムジナモとその最後の自生地宝蔵寺沼
幻の花
ムジナモの花はめったに咲くことがないため幻の花といわれています。
花は直径5mmほどと小さく、淡い緑色で水面に出て開きます。
つぼみをつけても咲かない時もあり、開花は夏の暑い日、1時間ほどで終わってしまいます。幻の花と言われるゆえんですね。
咲いた後は花柄がくにゃっと曲がり、水中で果実が熟します。そして冬になると葉をつけた茎の先端が球状に固まり水底に沈んで越冬します。
生息地
現在、ムジナモを野生で見ることができません。
かつての生息地であった宝蔵寺沼(埼玉県羽生市の東部)では、市をあげての保存活動を行っています。
参照:羽生市公式HP食虫植物『ムジナモ』を大切に育てているまち
牧野博士が発見した江戸川区でも、地元保存会がムジナモを栽培して増やす活動を熱心に行っています。
参照:江戸川区ムジナモ保存会
ムジナモ発見時の様子
ムジナモを発見した時の様子や特徴について、牧野博士が記された『ムジナモ発見物語』を青空文庫で読むことができます。
見られる施設
ムジナモを展示公開している施設を紹介します。
高知県立牧野植物園
【高知県立牧野植物園】
ムジナモは普段は温室に展示されています。花が咲く時に、中庭等で展示されることがあります。
(参照:牧野植物園 見頃の植物)
施設名 | 高知県立牧野植物園 |
住所 | 高知県高知市五台山4200−6 |
HP | 高知県立牧野植物園 |
さいたま水族館
【羽生水郷公園(さいたま水族館)】
ムジナモを栽培保護する唯一の自生地のエリア内は立入禁止になっていますが、隣接するさいたま水族館で展示されているムジナモを見ることができます。
「ムジナモを育ててみよう」というイベントを定期的に行い、栽培普及活動を担っています。
施設名 | 羽生水郷公園(さいたま水族館) |
住所 | 〒348-0011 埼玉県羽生市三田ヶ谷751-1 |
HP | 羽生水郷公園(さいたま水族館) |
ムジナモの栽培方法
とても珍しい植物のムジナモを自宅で栽培することができるのでしょうか。
調べてみると園芸店や通販で買うことができるようです。
なかには上手に育て花を咲かせる愛好家のかたもいらっしゃいます。
水生植物のお好きな方、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか?
参照:ムジナモの栽培方法
まとめ
世界でも珍しい水生食虫植物のムジナモは、絶滅が危惧されている食虫植物です。
牧野富太郎博士が発見し日本での開花を確認した頃のように、美しい自然環境に少しでも近づいて、野生でのムジナモ自生が見られるよう私たちも気がけていきたいですね。
朝ドラ『らんまん』の話題や、牧野富太郎博士ゆかりの気になる植物をこちらで紹介しています。
ぜひご覧ください。